映画と本と、珈琲と。

主に映画と本についてのブログです。

📖誰かが見ている/宮西 真冬 (著)

久しぶりに『ギャー…怖い!無理w』な作品を読んだのでレビューしておきます。

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誰かが見ている

第52回メフィスト賞受賞!
4人の女には、それぞれ表の顔と裏の顔がある。ブログで賞賛されたいがために、虚偽の「幸せな育児生活」を書くことが止められない千夏子。年下の夫とのセックスレスに悩む結子。職場のストレスで過食に走り、恋人との結婚だけに救いを求める保育士の春花。優しい夫と娘に恵まれ円満な家庭を築いているように見える柚季。
4人それぞれの視点で展開する心理サスペンス!
彼女たちの夫も、恋人もまた裏の顔を持っている。
もつれ、ねじれる感情の果てに待ち受ける衝撃!
「この先、いったいどうなるのか?」
ラストまで一気読み必至!! 

という内容。確かに一気読みした。文学と言うよりもドラマ色の強い作品で、あまり本は読まないが最近読書にはまりはじめました、な方には非常に読みやすい言の葉の運びで受け入れやすいと思います😊

 

イヤミスではない物の…人間の恐ろしさがよく出ているな、と感じました。いやぁ…怖い。結婚を仕事と捉えると、家庭は女性にとっての社会その物であり、夫婦間は夫家系という会社に就職したも同じ、24時間365日、あるとすれば降格のみで昇給も昇格もありゃしない、それなのに誰にも認められない褒められない…しかし子供が出来たら「わが社」の営業にも出向かねばならず、薦める商品にはそれそのものの意思があり……。

なんなんだこのブラック企業は!労基(裁判所)いったろかい!な気持ちもわかるw

 

私以前派遣のバイトで営業させられた経験があるのですが、あんな難しい仕事はないなと思いましたよ。動かない物を売っていても契約や購入に繋げられない、それなのにノルマはある、口ではノルマなし、とは言う物の…壁には氏名と契約/売り上げ件数が棒グラフで張り出され…ですね💦💦無言のプレッシャーやないか…でした。

 

それが!この家庭社会内の会社組織の製品は!意思を持ち、動くわけですよwそうじゃない、そのようにしてはいけない、という場面に限って悪い方悪い方に事が運ぶわけです。生真面目、クソ真面目な方には耐えられない業務かもしれない。。特に、それが自社ブランドとして判断をされる現場だと、その為にしっかりやってくれないと、と無駄に子供にそれを強いてしまう親御さんがいらっしゃるのも何となく理解できます。。自分だけじゃないですしね。姑もいればご主人という上司もいらっしゃる。広い大海のような社会と狭い枠での社会に潰されまいとする事もあるでしょう。

 

私の場合は相手が誰であろうと、これは私の意見ですが、とハッキリした性格でモノ申してしまうし『合わない会社なら辞めりゃいい』という軽いフットワークの信条でいる為、有難い事に、そうした社会に合わせようとは思っていない事も幸いして、自分が守るべきものは子供である、と絶対的こなすべき業務を理解した上で勤めているので、子の気持ちやあり方を最優先に考えられている、という育て方をしておりますwある程度いい加減だから出来る技だな、私、いい加減でよかったわ~とつくづく思うところ。

 

ダメですよー。それ、生きてますからね~。そこから80年近くはその親のやり方をベースにして生きていきますからね~。属するべきは社会か会社か、と尋ねられたら、そんな大きな存在を漠然と考えるよりもまずは目の前の仕事、と地道に励む事が得策です😊

何かから変えていく、を望むのであれば、まず自分の仕事に対する在り方を変えていかないと。

 

さて、作品の中では家庭に入った女たちのどろっどろの闇がところかしこにふんだんにちりばめられ、こんな風に考える人間の仕出かす事には全く頷けないし私には縁遠い感情ではあるものの…される側の気持ちはわかる。実際、過去に持っていたブログを見て訳のわからない嫉妬にまみれた方にいたずら電話をされまくり…みたいな事もあったし、この話の本筋を握る千夏子さんにもよく似た方を知っているので『あぁ…なるほどな…』と物語を総体的に眺め

 

"なぜ、そうなるのか"

 

を、理解した所存です。単に自己肯定感の低さの問題だろうと。

この感情は結構厄介者なのですよwどうせ私なんて…という感情は、あの人はとてもイキイキしているのに、と自分と他者との違いを比べて、初めて感じる感情なのかもしれません。そこから捻じれてしまう人は常に『私はあの人よりも苦労しているはずなのに』だとか『頑張っているのに!』という感慨に囚われてしまい、相手には何も苦悩がないような判断をしてしまう。あいつが目の前から消えてくれれば自分の人生は楽しいのに!とまで思ってしまう。えげつなく、恐ろしい。

 

こういう感情に出会ったとき「何目線なんだよw」「立ち位置どこだよw」と思ってしまうような"人は人、自分は自分"の考えで生きる私にとっては全く以て理解不能…しかし世の中にはそういう人の方が実は多いんだぞ!という事を女社会を通して知り、この話でも知りました。。

 

自己肯定感の低さって個人の内側の問題で他人は全く関係ないのに、なぜそこに他者を介在させて物事を考えるのだろう、というところがまず私にとって謎な部分です。誰かに何かを言われても、お互い様な時もあるし、それが図星な事だってあるし、受け取り手である自分の匙加減ひとつで幾らでも解消できてしまう。なのに誰かに認めて貰わないと、褒めて貰えないと、自己の確証を持てないなんて…となってしまう。これ、逆もあり得るわけですよ。考えた事あります?その逆とは、を。

 

例えばね、親になって一番に感じるところは、当然親なのでわが子のする事や姿、何でも可愛いですw可愛いですが、特に褒める部分、というところに目を向けると「優れているとは言えない部分が出来た時」に褒め比率があがるのですよ。いわばそれは裏を返すと『あなたには出来ないと思っていた事が出来た』という事でしょう?

※関係性が親子という遠慮のいらない間柄の場合です。全くの赤の他人に褒められる事は素直に喜ぶべき。

 

可愛いね、偉いね、立派だね。他人から言われる分にはいい気分だけど、親はある程度、本人が傷つかぬ範囲で「身の丈」という事も教えていかねばならない。これらを教える立場である親御さんが失敗なさると

 

私は可愛いと言われて当然なのに!大切にされて当然なのに!

 

となるわけです。言葉は悪いですが、だいたいそういう事を言い出し始めるのは、鏡みた事あんのか!な人、本当に立派だと言われる程にやり切ったような事がいままで何個あるよ?ねーだろ?甘えてんじゃねーよ!な人に多かったりもします。見た目はあれだけど気立てはいい子、それはそれは姫のような♡と親が思って褒めたたえた裏側を自分はずっと見て来ているのかもしれない!幻想か!?と何故それらを疑問にもって育たないのかが不思議な程…という場合もよくあります。

 

褒めの教育は良い子を育てる代わりに、現実から遠ざかろうとする側面も大きくある、という部分を念頭に入れて子育てをせねばなぁ…といつも思うところ。自己認識の甘さは自分の子に必ず影響します。人は環境で育つ部分も大きいので。自分の悪さを反面教師としてくれるだけの屈強な精神が子に備わっていれば、別ですが。

 

私自身は身の丈を理解しているつもりなので多くを望む事もないし、誰かに幸せにして貰えるという考えを持つタイプでもなく、自分が納得の行く状態が幸せだと思っているのでそれらはあまり自己肯定感には響きません。身の丈、と言われるとみみっちい感じに響きますが、身の丈を知っている、それは自信がないという事とはまた別物なので。

 

むしろ私なんぞはなんもできてねーなwはははwな「で?なに?」な部分が大きいために、誰かの幸せ、いーじゃんいーじゃん♡誰かが泣いてる…よくないぞー、誰も幸せにも楽しい気分にもしてくれないんだから何とかそっから抜け出す方向選ぼうね~

な感じだし、ある程度人も見ているので、あぁ…これは私がいるとダメになるな、だとか、私にはあなたをどうする事も出来ないわ!な時には、きちんとその旨を相手にお伝えして去るタイプにあり(赤字部分は非常に大切です。客観的にみてこう感じたのでこの関係は難しいのではないか、のような建議を一蹴してしまうと、相手の持つ捻じれている自己肯定感に『やっぱり私はこうだから…』とか『こんな私は面倒なんでしょうね』が積もり積もって一石投じる結果になるので。)

 

よって!この作品に出てくるようなえぐい人たちが周りにいない…が!あーなるほど、ふむふむなるほど、なるほどねー!って知らんやん!そんなんあんたの問題やん!となりました(作者の宮西さんはそういう部分を「ん?」と思い描かれたのではないか、と。=そうした感情の向きの女性が多いという事…いやだ、人間怖い!www)

 

しかしやっぱり子供の世話をするのが多くのご家庭ではいまだ女性の仕事となっている部分で、そりゃお母さんが面白くなければこんな子産むんじゃなかった!と思ってしまう事もあるだろうし、この厄介な生き物さえいなければ私も自由になれる!と思う事もあるでしょう。それはよく理解できる感情です。こうでなければいけない、の正解がないので、自分の意見が正解、となりやすいのも子育てですが、実は子供も他人です。あなた自身、私自身の感情は他人には全く関係ない、というのも確か。

 

体は密着していても、心はある程度の距離感を保ち、休み休み、やっていってほしいなぁ。子供が犠牲になってしまうのは、物語にしても、実際の事件にしても聞くにたえないし美しい物ではないです。このまんまじゃダメだなー、なんて思う時は、自分も人間であるという事と、自分がされたらどうかという原点に立ち返り(初歩も初歩だけどw)こう言われたいな、ああ言われたいな、と思うような言葉を沢山かけてあげるといいかな、と。誰かを癒す事で自分が癒される事も多々あります。私はこの人を幸せな気分にしてやっている、ではなく、この人だから私から良い言葉を引き出せる、という存在の有難さにも目を向けて。

 

しかし…女社会とはえげつない。震えた。恐い。私、男っぽくて本当によかったと思った話でした。出てくる人物ただ一人を除き、ろくでもない人しか出てこないww

ヒェッ…と背筋の凍った話でありました。個人的にメフィスト賞受賞作品、おススメです。面白ければよい、というあまり枠に捉われない賞なので、色んなタイプの話があるし、ついつい唸っちゃう。ドラマ色の濃いお話なのでサクサク黙々と読み終わりました。あぁ恐かった恐かった。